季節性感情障害とは
- Colorful Kids
- 5月24日
- 読了時間: 7分
「寒くなるにつれて気持ちが落ち込んでしまう」
「冬になると何だか寝れない」
そんな、ある季節にだけ現れる症状に悩んだことありませんか?
もしかしたら、それは季節性感情障害(SAD)かもしれません。
あまり聞き馴染みのない名前なので、「なにそれ?」と思う方も多いはず。
そこで今回は、季節性感情障害(SAD)の特徴や症状、対処法ついてわかりやすく解説していきます。
もくじ
・過眠
・過食
・意欲の低下
・倦怠感
季節性感情障害(SAD)とは?
季節性感情障害(SAD)とは、特定の季節になると気分が落ち込んだり、体がダルく感じたり、疲れがとれにくくなるといった症状が現れる心の不調のことです。
不思議なことに、症状が出るのは「毎年同じ季節」だけで、それ以外の季節では何事もなかったかのように元気で過ごせるという特徴があります。
中でも多いのが、秋から冬にかけて気分が落ち込むタイプで、「冬季うつ病」や「季節性うつ病」と呼ばれることもあります。
一方で、約3分の1ほどの人は春から夏にかけて気分が不安定になるタイプもあり、季節性感情障害は必ずしも冬だけに起きるものではありません。
代表的な症状とチェックポイント
季節性感情障害の代表的な症状としては、過眠や過食による体重の増加などの体調の変化に加えて、意欲の低下や倦怠感など心の不調も含まれます。
ポイントは、「明確な要因となる出来事やストレスがないのに、これらの症状が毎年同じ季節に現れる」ということです。
ここでは、代表的な症状ごとにチェックポイントを詳しくご紹介します。
過眠
冬になるにつれて、十分寝ているはずなのに、まだ眠い・起きられないという症状が出ることがあります。
例えば、「10時間以上寝ているのに朝起きるのがつらい」、「日中に強い眠気に襲われる」といったケースは、季節性感情障害のサインかもしれません。
過食
特に炭水化物や甘いものが無性に食べたくなるという場合、季節性感情障害の可能性があります。
これは、気分を安定させる働きのある「セロトニン(幸せホルモン)」が不足していることが関係しているからだと考えられます。
食べることで一時的に気分が上がったとしても、すぐにまたセロトニンが不足してしまい、また過食をしてしまう…なんて悪循環に陥ってしまうことも。
過食を続けてると体重の増えるだけではなく、健康面にも影響するため注意が必要です。
意欲の低下
これまで興味があったものや楽しかったものに対して、急に興味が持てなくなるのも特徴の1つです。
趣味や仕事、人付き合いへの意欲がわかず、無気力になってしまうことがあります。
このような意欲の低下は人によって幅があり、「なんとなくやる気がでない」程度から「何も手につかない」といった重い状態までさまざまです。
ただし、春や夏にかけて回復する場合には、季節性感情障害の可能性が高いといえるでしょう。
倦怠感
意欲低下に似ていますが、「なにもしたくない」「体がだるい」「朝が起きれない」といった、強い身体的なだるさが特徴です。
生活のペースを落としたり、しっかりと休養をとっても回復しないのがポイント。
これが毎年決まった季節に繰り返される場合は、季節性感情障害の可能性があります。

季節性感情障害の原因は?
季節性感情障害は、複数の要因が複雑に絡まり合って起きていると考えられています。
その中でも主な要因として挙げられるのは、「日照時間の減少による体内時計のずれ」「メラトニン・セロトニンの分泌異常」「生活習慣や遺伝的要因」の3つです。
それぞれ詳しくご紹介します。
日照時間の減少による体内時計のずれ
冬になると、日照時間が自然と少なくなっていきます。
これにより、体内時計のリズムを整える「メラトニン」というホルモンが過剰に分泌されるようになります。
その結果、「寝ても寝ても寝足りない」という状態が起こるのです。
体内時計がずれると、睡眠と覚醒のタイミングが崩れ、心身のバランスが乱れやすくなります。このずれが、気分の落ち込みやだるさなどの不調を引き起こす要因となります。
セロトニン・メラトニンの分泌異常
気分を安定させる働きの「セロトニン」は、日光を浴びることで分泌が促されるホルモンです。
しかし、日照時間の短くなるとその分泌量が減少し、気分の落ち込みやイライラを引き起こしやすくなります。
また、セロトニンから生成される「メラトニン」は睡眠を促す働きをしますが、これが過剰に分泌されると、必要以上に眠くなり、過眠の原因に。
このように、ホルモンバランスの乱れが、季節性感情障害の症状に深く関係しているのです。
生活習慣や遺伝的要因
不規則な生活習慣も、季節性感情障害になる確率を高める要因の1つです。
特に、睡眠不足や偏った食生活が続くと、セロトニンの分泌が減少し、心のバランスが崩れやすくなります。
また、家族に季節性感情障害を経験した人がいる場合、遺伝的に発症しやすい傾向があるとも言われています。
家族歴がある方は、日ごろから生活リズムを整えるなど、意欲的な予防が必要です。
季節性感情障害の治療法は?
季節性感情障害は、症状が軽ければセルフケアで改善が期待できます。
ただし、重度の場合は医療機関での治療が必要になることもあります。
主な治療法は、「セルフケア」「高照度光療法」「薬物療法」「認知行動療法」の4つです。それぞれ、症状の緩和や改善に効果があると言われているので、詳しくご紹介していきます。
セルフケア
「なんだかしんどいな」くらいの軽い症状であれば、まずはセルフケアを試してみましょう。
・日照時間が短くなる季節は、できるだけ日光を浴びる
・外に出て体を動かす(散歩など)
・家族や友人に状況を理解してもらい、協力を仰ぐ
・クリスマスや冬のレジャーなど、楽しい予定を意識的に考える
これらを意識するだけでも、症状の緩和につながることがあります。
重度の方でも、セルフケアは補助的に効果があるとされています。
ただし、「セルフケアをやってみてもよくならない」「やろうという気力がわかない」場合には、無理をせず、精神科や心療内科など専門機関に相談しましょう。
高照度光療法
医療的な治療として、最も基本とされるのが高照度光療法です。
これは、「ライトボックス」と呼ばれる特殊な機械を使って、2,500〜10,000ルクスの明るい光を1〜2時間ほど浴びるという方法です。
日光と似た性質の光を浴びることで、体内時計をリセットして、症状の改善を図ります。
ただし、このライトボックスは医療機関での使用が基本で、一般的には貸し出しはされていません。
また、継続して光を浴びないと、症状が再発しやすいため、定期的な治療が必要です。
薬物療法
うつ症状が強い場合や、光療法を試みても思うような効果が出なかった場合には、薬物療法が行われます。
使用されるのは主に、SSRI(テプロメール、ルボックス、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)と呼ばれる抗うつ薬です。
ただし、季節性感情障害の中には、「双極性障害(季節が終わるとハイになる)」になるタイプもあるため、医師の判断のもと、慎重に薬を選ぶ必要があります。
そのため、薬は「症状のある季節のみ使う」というケースもあります。
認知行動療法
毎年同じ季節に体調が悪くなると、「またこの季節が来た…」「しんどくなるかも」といった不安やマイナスの思い込みが強くなってしまいがちです。
このようなネガティブな考え方を見直し、前向きな思考へと切り替えるのが認知行動療法の目的です。
たとえば、「冬=しんどい」ではなく、「冬はイルミネーションや温泉、鍋、スキーなど楽しいこともいっぱいある」と少しずつポジティブな経験に置き換えていくことで、心のクセを修正していきます。
認知行動療法は、再発防止にも効果が期待されている治療法です。

まとめ
季節性感情障害(SAD)は、特定の季節になると気分が落ち込んだり、過眠・過食などの症状が現れる感情障害です。
軽症ならセルフケアで改善が期待できますが、つらさが続く場合は無理せず専門機関に相談をしましょう。「気のせい」で片づけず、自分の心と向き合うことが大切です。
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